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 アルフィタリア城に足を踏み入れたティパの村のキャラバンは、その大きさに驚いた。
 ティパの村とはあらゆるものの大きさが違う。なにより驚いたのはクリスタルを中心に広がる街並みだ。クリスタルを中心に放射状に広がっているアルフィタリア城は、外から来たム・ジカたちにもわかりやすい。
「あれが城かー」
 アルフィタリア城、その中心にある大クリスタルの前で、ム・ジカは腰に手を当て、感嘆の声を上げた。大きい。住む以外の用途のある建物など、せいぜいが二階建ての宿屋ぐらいなので、その大きさに思わず声が漏れたのだ。
「あそこ、結局は王様の家ってことなんだよな・・・・・・。まぁ、王様に会いにいろんな人がくるだろうから、商談の席でもあるのか?」
 そう考えると少し納得がいく。ム・ジカの実家でも、商談に使われる部屋は他の部屋よりも内装を豪華にしてある。もっとも、ム・ジカの家の場合、商談に訪れるのは大半が村人であるが。それでも、たまに訪れる行商人が来た時などは、その席で互いに納得のいく商談をまとめるものだ。
「ティパの村でも応接室は豪華にしてるし、王族ともなればもう少し外面は大切ってことか」
 見たいものを見たム・ジカは、城から視線を外し、周囲を見る。ティパの村の他のメンバーは、思い思いにアルフィタリア城を散策しているだろう。
「さて、とりあえずここではどんな商品を取り扱ってるか見て回るか」
 村にいた頃は店の手伝いから逃げ回っていたム・ジカではあるが、村の外に出て一番気になるのは、結局その地域でどのようなものが売られているか、ということだ。ム・ジカはそのことに自身では未だに気がついていない。
 そしてム・ジカは商人を探して歩き始めた。


 エリンは目に付く飲食店へと次々に入っていた。
 ティパの村、マール峠双方に言えることだが、これまで見てきた場所は種族があまり統一されていなかった。そんな中で、このアルフィタリア城はリルティの数が群を抜いて多い。なにか面白い味付けのものがないかと思ったのだ。マール峠で滞在していた間は、ノディの家からほとんど出ることなく資材の整理をしていたエリンが、アルフィタリア城でこんなにも行動的に成ったのは理由がある。
 それは味という名のおみあげを求めてだ。リルティの数が圧倒的に多いこの場所では、リルティならではの味付けが色濃く根ずいていると思ったからだ。もちろん、キアランはクラヴァットである。クラヴァットとしての味付けが不満なわけではないだろうが、リルティたちの料理を食べさせて驚かせたい、というのを思いついたのだ。ティパの村にも、チャドの家族をはじめ、リルティは少なくない数いる。しかし、リルティが圧倒的に多い環境で熟成されてきた料理の味付けは、ティパの村のものとはまた別のものとなっていると思ったのだ。
 それをここ、アルフィタリア城でものにしたい。それは今回の旅の旅程ではここでしか得ることのできないものだ。
 そしてエリンは珍しい味を探してアルフィタリア城を歩き回る。


 チャドは、燃え盛る炎を前に佇んでいた。その耳に聞こえるのは、一定の間隔を置いて響く金属音。鍛冶屋の前だ。
 アルフィタリア城。リルティの納めている土地だからといって、そこになにか特別な手法はなかった。チャドの知っている通り、熱した素材を、槌で鍛える。言葉にすればそれだけだ。しかし、その槌を握っているのは、チャドの常識では考えられないことだった。
 チャドよりも小さい身長。それはまだいい。チャドはリルティにしては大きいほうだ。じ分よりも小さいものが槌を握ることには別に文句はない。しかし、今目の前で槌を振るっているのは、女だったのだ。家事仕事は男がするもの、と思っていたチャドには驚愕の現実だった。
 すると、槌を握っていたリルティが、目の端でチャドを捉えた。一瞬からだを硬直させるチャド。仕事の邪魔だと言われて、父の手から槌が飛んできたことを思い出したのだ。
 しかし、そんなチャドの内心の怯みを、槌を振るっていたリルティは笑った。そして、手にしていた槌を置くと、チャドの元へと歩み寄ってきた。


 イーリアスは、アルフィタリア城の中央にある大クリスタルの前にいた。つい先ほどまでム・ジカがいた場所だが、今そこにム・ジカの姿はない。そしてイーリアスもそこでム・ジカがアルフィタリア城を見上げて感心していたことは知らなかった。
 イーリアスがティパの村よりも大きなこの大クリスタルを見に来たのは、つい先ほどだからだ。
 イーリアスは大クリスタルの前で腕を組み、首をかしげ、目下悩んでいます、という空気を全力で出していた。
 悩んでいるのは、
(クリスタルの大きさによって必要な雫の量は変わらないのでしょうか・・・・・・?)
 考えるのは、大クリスタルの前に来る前に行った実験。それはアルフィタリア城の外周の大きさだ。クリスタルの加護の範囲と言い換えてもいい。
 その実験によれば、アルフィタリア城のクリスタルの加護の範囲は、ティパの村のものよりも広いことがわかった。
 そして、そのことがわかり、先ほどの疑問に行き着いたのだ。イーリアスの常識でいけば、大きな力にはそれに見合う代償がいる。維持するための燃料といってもいい。大きな火を保つには、それなりの薪が必要なように。火の規模が違えば、必要な薪の量も変わってくる。
「ですが、クリスタルにはそのようすがありません・・・・・・」
 イーリアスは、大クリスタルの前で腕を組み続ける。


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