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 リバーベル街道に足を踏み入れたム・ジカ達を迎えたのは、ゴブリンを始めとする魔物達だった。
 こうなる事を覚悟していたティパの村のキャラバンだったが、想像と実際に行動するのでは大きく違う。
 その事を一同は痛感していた。
「ごめん、ちょっと水とって」
 チャドが力なく言う。その声を満たしているのは疲労だ。
 どうにかミルラの木までたどり着いたム・ジカ達だったが、今は次のミルラの木に行くまでの休憩中だ。
「聞いていたし、覚悟もしているつもりだったけど、やっぱつらいなぁ」
 そう言うのはム・ジカだ。
 しかし、その声にはそれほどの疲労はなく、むしろ微かに笑っている。
「本当に、なかなか大変でしたねぇ」
 それに追従するイーリアスの声は、どこか楽しげだ。
「二人ともどうしてそんなに元気なの……?」
 チャドと同じく。むしろ、チャドよりもやや疲れた声を出しているのは、エリンだ。
 エリンの言葉を、ム・ジカが笑う。
「俺はキアランといつも同じようなことして遊んでたからな。ま、これぐらいの戦闘なら慣れたもんよ」
 ム・ジカの言葉にエリンがため息を吐く。
「そうじゃなくて……。単純な戦闘練習だったら、私だって村でやってきたわ」
「僕だって毎日父さんに稽古つけてもらってたよ?」
 リルティの名誉にかけても、チャドは引く訳にはいかなかったのだろう。慌てて言葉を挟んでくる。
 その様子にム・ジカは苦笑する。
「単純に、性格の問題では?」
 クラヴァットとリルティの二人に応えたのは、ユークだった。
「私はまぁ、どこかぼけたところがありますし、今回の一連の戦闘でも、落ち着いて魔法の詠唱に専念していたので。ム・ジカさんは端から見ていると、魔物と戦いながらも、その、魔物以外をみていたといいますか。景色や水の流れなんかにもかなり目移りしていたので」
 イーリアスの言葉に、エリンとチャドが呆気にとられている。
 ム・ジカはそれを聞くと、納得したように頷いた。
「確かにそうだな。ゴブリンが目の前にいても、俺はオーラショットで遠距離から攻撃してたし、魔物が何体か集まってても、どこから攻撃しようかってことを考えてたな」
 ム・ジカの言葉に、エリンとチャドが呆然としている。
「た、確かに魔物と戦ってる時、気がついたら後ろの魔物がいなくなってたような・・・・・・」
 先に正気に戻ったのはエリンだった。
「ああ、俺が後ろから狙撃してたからな」
「そ、そういえば、クリスタルケージ!僕たちが戦うことしか出来てなかったのに、瘴気を全然吸わなかったのって・・・・・・」
「お二人がクリスタルの加護の外に出そうになったら、私がケージを運んだからですよ」
 初めてミルラの雫を得た後の休憩時間で、エリンとチャドは自分たちがム・ジカとイーリアスにいかにサポートされていたかを知った。
「今後はもっと周囲を見れるように気をつけます・・・・・・」
 エリンが沈んだ声でそう言えば、その隣でチャドもへこんでいる。
「いやいや、そんなにへこむ事無いって」
 ム・ジカの言葉に、二人が顔を上げる。
「二人が魔物の注意を引きつけてくれなかったら、後方で狙撃なんて出来ないし、回復するときも魔物からいったん逃げないといけない」
 ム・ジカの言葉に、二人の表情が少し明るくなる。
 それをみて、ム・ジカは内心で安堵の息をつく。まだまだ一回目なのだ。
 少なくとも後二回は雫を集めないと水掛祭は出来ないし、村に残っている人にも負担は掛けたくない。
「だから、二人はしばらくそのままでいい」
「そうですね」
 ム・ジカの言葉に、イーリアスも同調する。
「問題は物理攻撃があまり効かない魔物が出てきたときだ」
 エリンとチャドが首を傾げる。
「俺は魔法の詠唱がそこまで早くない。そうなったら、エリン。お前が後ろに下がれ。で、イーリアスと二人で魔法を使ってくれ。チャド、そうなったら俺と二人で近接戦闘だ」
「わ、分かった」
 チャドの、返事に、ム・ジカが笑う。
「よし、じゃあ、後二回ミルラの雫を貰って、さっさと村に帰るか」
 四人は、決意を新たにすると、次のミルラの雫を求めて歩き出した。


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