「・・・・・・最近レギオン教が元気だな」
 陽光大陸のとある国。その地下王宮の執務室で、地方の報告書を肘をついて読みながら、呟く人間がいた。
「まぁ、そうだろうね。レギオン教の女教皇を匿ってるも同然の状態だし。皇帝もいい加減彼女の立場を明確にしてあげればいいのに。うちの嫁さんも言ってたよ?」
 執務室の人間を皇帝と呼び、その呟きに意見を述べたのは後ろ足で立つ狼だった。
「そうは言うがな・・・・・・俺はこの国の方針に従っているだけだからな」
「方針っていうと・・・・・・平和的に来るものは拒まず、そうでないものには武力で持って対応する、かい?」
「ああ。あの女はこの国で混乱を巻き起こすこともなく静かに暮らしている。困ったことといえば・・・・・・」
「陛下!!」
 皇帝の言葉にかぶせるようにして、執務室の扉が勢い良く開かれた。入ってきたのは、一見人間の子供のような外見をしたものだ。しかし、その額には小さなツノが生えており、人間とは異なることを主張している。この国に住んでいる小鬼だ。帽子をかぶりツノを隠せば人間の子供と勘違いさせることができるので、この国ではよく密偵として使われることが多い。
 皇帝は飛び込むように執務室に入ってきたその小鬼をうんざりした顔で見つめた。
「どうした。またあの女か」
「は、はい。お察しのとおりです」
 小鬼の言葉を聞いた皇帝は読んでいた書類を机の脇に置くと立ち上がった。
「場所はいつものところでいいんだな?」
「そ、それが・・・・・・」
「違うのか」
 小鬼の言葉に驚きを感じ、小鬼の顔を見た。そして、続けて小鬼の口から語られたことを聞き、秘書として使っている狼とともに執務室を飛び出した。


「テメェ!いい加減にしねぇとその頭ぶっつぶすぞ!!」
 地下の路地裏は他の場所よりも湿気があり、光も届かない。その場所で、数人の女性が大柄な男性達に囲まれていた。女性の方は種族がバラバラだが、男性の方は人間ばかりだ。
 大柄な男性に囲まれて互いに抱き合い、震える女性の中で、ただ一人、恫喝してくる男性を臆することなく見上げる女性がいた。しかし、睨みつけているのではない。その顔にはかすかに笑みすら浮かんでいる。
「やめましょう。同じ現世に生きるものではありませんか。そのような振る舞いをしていては前世の罪を償うことができませんよ」
「やかましい!!現世だの前世だとのくだらねぇ!!俺たちが生きてるのは今なんだよ!死後どうなるかだの、残されたものがどうのとテメェの宗教を俺たちに押し付けるんじゃねぇ!」
 怒鳴る男性に、女性が穏やかな笑みを向けた。この地でレギオン教の布教活動を始めた女教皇だ。
「押しつけているつもりはありませんよ。ただ、あなた方がお仲間を失って辛そうでしたので、この世の苦しみから解放されたのだ、という風にお話ししただけで」
「うるせぇッ!」
 ついに声だけでなく、その腕が女教皇に振るわれようとした。が、その腕を後ろから抑えるものがあった。血走った目でそれが誰かを確かめた男性は、その目を見開いた。
「戦場以外で女に暴力は振るうもんじゃない。そんなことをするためにお前は己を鍛えているわけではないだろう」
 女教皇も、その声で男性の腕を押さえているのが誰かがわかった。
「閣下・・・・・・」
 女教皇が思わずつぶやいた声に、皇帝はちらりと目を向けた。しかし、一瞬後にはその視線は腕を押さえつけている男性に向いた。
「お前のその力は俺が買っている。誰にその力を振るうかは俺が決める。この俺が統治する地下都市に住むものに対してその力はふるうことは許していないはずだが」
 勢いの削がれた男性は、皇帝に腕を解放されてもその腕を再び女教皇に向けることはなかった。


 路地裏から場所を移し、王宮の近くにある軽食店に入って話を聞くことになった。女教皇と外で会うときによく使う軽食店で、奥に個室があるのがいい。初めて入って以来、他集落の長などとの会議後の食事会などでは重宝している。聞いた話だと、そのおしゃれな外見からよくデートなどでも使われるらしい。
「で、一体何が原因でこうなった。両方の言い分を聞こう。まずは聖母。お前から聞こう」
 部屋の中には皇帝と女教皇、そして皇帝に腕を掴まれて止められた男が一人だ。皇帝に声をかけられた女教皇は頷くと、口を開いた。
「その方が、道端で数人と連れ立って歩いている際、辛そうな顔をしておりましたので、何か悩みがあるのですか、と聞いたのです」
 まぁ、この女ならやるだろう、と思った。聖母、と呼ばれていたのは伊達ではないらしく、この女は、深刻そうな顔をしている人を放っておく、ということができないのだ。
「そうすると、『ともに戦ってきた仲間が戦場で命を散らした』、と申されました。『悲しむことはない。あなたのお仲間は現世での務めを果たし、命のみちる場所に帰ったです』。と私は言いました。すると、その人が目の色を変えて私たちを路地裏に引き込んだのです」
 女教皇の話を聞いた皇帝は頭を抱えたくなった。正直目の前の女が無事でいることが未だに信じられない。確かにレギオン教の布教活動を認めはした。宗教の布教によって友や家族を失ったものを救ってくれとも言った。しかし、相手をよく見ずに深刻そうな顔をしているものにこうして話しかけてはよく問題を起こしているのも事実だ。
「この女の言っていることに間違いはないか」
「え、ええ。間違いごぜぇやせん」
「そうか。よしお前はもう帰ってもいい」
 皇帝にそう言われた男は、逃げるようにして部屋から出て行った。
 男が出て行ったのを見て、皇帝は机に頬杖をついた
「・・・・・・お前な、確かに俺は布教活動しろって言ったぜ?でもよ、ちっとは場所考えようぜ」
 頬杖をついた状態で女教皇の目を見ようとすると、少し視線を上げないといけない。だからそうした。そうすると、女教皇は視線を逸らした。
「なぜ視線をそらす」
「い、いえ・・・・・・。思ったほどレギオン教の布教活動がうまくいかないので申し訳なくて」
「そういうこと言ってねぇよ!」
 思わず大きな声で言い返すと、女教皇は目を丸くした。
「え、違うのですか」
 間違いなく、この女に悪意はないのだろう。むしろここまで純粋なことに危うささえ感じる。皇帝はため息をついた。
「お前、もうちょっと・・・・・・」
「皇帝!!」
 皇帝が口を開き、女教皇に忠告をしようとした時、個室の扉が開け放たれた。このような開け方をするのは店の従業員ではないだろう。そして、このように皇帝のいる部屋の仕切りが破られるのは、本日二度目だ。最近は女教皇が聖堂で諍いを起こし、それを仲介に入るのが主だったのだが、いま、その女教皇は目の前にいる。皇帝が扉の方を向けば、そこには女教皇が面倒ごとに巻き込まれている、と報告してきた小鬼だ。
「今度はどうした」
 皇帝が半ばうんざりして聞くと、小鬼は一度息を吸って呼吸を整えた。
「レギオン教です。地上で過激派がこちらに向かってきています」
 面倒な・・・・・・。と口の中でつぶやくと、皇帝は立ち上がった。
「わかった。各員に戦闘態勢に移行するように伝えよ。俺も装備を整えてから前線に向かう。敵進行経路はいつもと同じか」
「はっ!いつもと同じです」
「よし。では行け」
 皇帝が命じると、小鬼は部屋の扉を閉めて出て行った。
「・・・・・・そういうことだ。俺は出る。お前は聖堂でおとなしくしてろ」
 そういうと、皇帝は食堂の個室を後にした。


 皇帝は私を神聖化しすぎている。
 皇帝が軽食店の個室から出て行った後で、女教皇はテーブルに突っ伏していた。
 女教皇もこの国に来る以前はレギオン教の穏健派を擁護してくれる有力者を探して方々を旅してきた身。それなりにどういうところが危険か、ということはわかっているつもりだ。それでも危険を顧みずに行動してしまうのは、危なくなったら皇帝が助けに来てくれる、というのをどこかで期待しているからなのだろう。自分のように、宗教に頼ることなく、己の能力で道を切り開いていく皇帝に、心惹かれている自分がいるのを、女教皇はわかっていた。こんなことを言えば、きっと皇帝は、『皇帝という立場があるからこそこのような振る舞いが許される。もしもこの立場がなかったら、もっと穏やかに暮らすさ』。と言うだろうが。
 そこまで考えて、自分の考えに思わず笑ってしまった。そんなに長い間接したわけでもないのに、ここまで人の考えがわかるのは初めてだ。・・・・・・もっとも、皇帝は自分の考えを垂れ流しにしているので、考えがわかりやすい、というのもあるが。
「さて、聖堂に戻ってこれからのことを考えないと・・・・・・」
 皇帝には、もっと布教活動をする場所を選べ、と言われてしまった。聖堂で待っているだけではなかなか信者は増えていかない。女教皇は席を立つと、聖堂に向かって足を進めた。


 女教皇は、聖堂で一人祈りを捧げていた。地表に出れば、すでに月が1つは出ている時間帯だ。レギオン教の教典では太陽が3つ昇る頃に祈ることを義務付けているが、それ以外の時間帯に祈ってはいけない、という法もない。
 月が昇り始めれば、精霊術が使えるようになるため、戦闘は激化する。過激派が攻め入ってきたと報告があったのが祈りの時間の少し前。おそらく過激派は祈りを終えてから戦闘を開始しただろうから、かなり長い事戦っていることになる。
 女教皇が、皇帝の率いる軍隊の無事を祈り、さらに胸に右手を押し当てると聖堂の扉が遠慮がちにノックされた。女教皇が許可を出すと、羽の生えた女性が恐る恐る、といった様子で入ってきた。
「こんばんは。どうされました?」
 女性の羽はこの地域に多い鳶色の羽だ。同じ色の髪を肩口で切っているのがかわいらしい。
「あ・・・・・・。もしかしてあなたの大切な人が亡くなったのですか?でしたら・・・・・・」
 いつものように、レギオン教の教えを施そうをして、思いとどまった。はたしてこの人がレギオン教の教えを必要としているかがわからなかったからだ。
 口ごもる女教皇をみて、鳶色の羽の女性は微笑んだ。
「いえ、あたしは誰も失っていませんよ。あたしは皇帝陛下の伝令としてここに遣わされたのです」
 それをきいて女教皇は首をかしげた。皇帝がこちらに出向くことは多くとも、皇帝が女教皇になにかを伝えたり、皇帝の元に来るようにいわれることは今ままでなかったからだ。
「もっとも、実際には皇帝陛下の部下であるうちの隊長の命令なんすけどね。ほら、狼頭の。聖母様もよく知ってるでしょう?」
 女性の言葉に、よく皇帝のそばで見かける狼を思い出す。
「ああ、あの方ですか。それで?伝令というのは・・・・・・」
「こりゃ失敬。えぇっとですね・・・・・・。さっきの戦いで皇帝陛下が傷を負ったので、至急王宮にこられたし、とのことでした」
「怪我?!あの皇帝がですか?!」
 それもわざわざ女教皇に知らせるほどだ。よほどの怪我なのだろう。
「わ、分かりました。すぐに向かいます!」
 女教皇は女性を伴って聖堂の外に出ると、聖堂を施錠。王宮に向かった。
「皇帝陛下!!」
 地下王宮の執務室に飛び込むように入ると、皇帝は執務机に頬杖をついて気だるげに書類をめくっていた。女教皇が入ってきたことに驚いたのか、皇帝は書類から顔を上げた。
「なんだいったい。騒々しい。もう日は沈んだぞ」
 常に天頂に太陽があるこの国で、日が沈んだ、というのは二度と太陽を見ることがない。ということで、それは店であれば閉店、人であれば現世から離れることだ。『そこまで言うということは、この人は皇帝としてやっていけないほどの怪我を負ったのかもしれない』。そう解釈した女教皇は顔を真っ青にした。
「ど、どこを怪我したんですか?!寝てなくても大丈夫なんですか!?」
 女教皇が皇帝に矢継ぎ早に質問しながら歩みよると、皇帝は椅子を引き、執務机を盾にした。
「落ち着いてください。大した怪我ではありませんので」
 女教皇にそういったのは、目の前の皇帝ではなかった。声のした方を振り返れば、女教皇が開けっ放しにしていた扉から、軍服を着込んだフクロウ頭の男性が入ってくるところだった。
「おい。これは一体どういうことだ」
 皇帝がその場から動くことなくフクロウにそう問いかける。
「ああ、私の嫁にこの人を迎えに行かせたんですよ。その怪我では公務に支障があるでしょう?・・・・・・ああ、狼野郎からの命令で、と言われたんですね?狼野郎からの命令で伝令にきた、といえばあなたにとっての信憑性はますと思ったので奴の名前を使いました」
 鳶色の彼女は確か狼さんからの命令で来たと言っていたけど。と思っていると、フクロウはその意思を汲み取り説明してくれた。
「はぁ?馬鹿にするなよ。この程度の怪我、なんの問題もねぇよ・・・・・・」
「やはり怪我をしているのですか?!」
 皇帝の『怪我』の一言に思わず鋭く反応した女教皇。
「ええ。していますよ。右手にざっくりと流れ矢が突き刺さりまして。その一瞬後には射手を斬り伏せていましたが」
 フクロウの言葉に、皇帝は背もたれにもたれかかった。
「ああ、そうだよ当たったよ。でもほんとになんともねぇから」
 そう言ってヒラヒラと振る右手には、今まで机の下にあったため見えなかった包帯が。矢が刺さった、と言っていたので、普通ならそのように手を振るだけでも激痛が走るはずだ。
「・・・・・・私のせいですよね」
「は?なんでそうなる?お前には何の責任もないだろ」
「ですが!過激派の方々がここを責めるのは私がここにいるからで、つまりその怪我も私がここにいなければしなかったはずです!」 
「たしかにその通りです」
 なにか言おうとしていた皇帝の言葉を遮るように、フクロウがそう言う。
「あなたがいたから皇帝は怪我をしました。あなたはその身をもってその罪を償わなければいけません」
「おい!なにいってやがる?!」
 皇帝がいすを倒すほどの勢いで立ち上がった。しかし女教皇にとってはそれどころではなかった。この国の皇帝を危うく死なせるところだったのだ。どれほどの罪になるのだろうか。レギオン教の信者として、戦場での死亡はこの世からの解放だ。それは平時における自然死と同じ扱いであり、尊い死に方の一つではある。だが、皇帝はレギオン教ではない。レギオン教の死に関する解釈には囚われないだろう。
「ですから、罪の償いとして、皇帝の腕の代わりとしてしばらくここで働いてもらいます。あぁ、あなたに戦場での活躍は無理でしょうから、執務室における一般政務の補佐、という形で」
「・・・・・・はい?」
 フクロウの言葉がよく理解できずに、女教皇は頭をかしげた。
「ちょっと待て!!」
「皇帝は少し黙っていてください。だいたい。その腕で仕事が十分にこなせるとでも?」
「う・・・・・・!」
「ただでさえ書類確認は遅いのに・・・・・・。戦闘馬鹿が戦場に出ることもできず、政務で周りの足を引っ張るおつもりか」
 フクロウの言葉が響くたびに、皇帝は次第に姿勢が崩れていき、ついには机に額をついた状態で動かなくなった。女教皇の知っている皇帝は、常に威風堂々としており、この世に出来ぬことはない、という雰囲気をまとっている。それだけに、事務処理を苦手とする皇帝を見るのは新鮮だった。
「さて、では引き受けていただけますな?」
 一応疑問の形は取っていたが、女教皇に拒否権はなく、拒否するつもりもなかったため、女教皇の王宮勤めが決まった。


「・・・・・・お前、布教活動はいいのかよ?」
 皇帝が腕を怪我したため、看病で女教皇が王宮に来るようになって数日。皇帝は女教皇にそう問いかけた。怪我した右手は三角巾で固定されている。さらには右手の平から指にかけては包帯で巻かれており、力が込められないようになっている。無事な左手には書類を持っている。使い慣れていない左手では小さな動作が上手くいかないため、仕事に集中できない。
「・・・・・・え?なにか言いましたか?」
 女教皇が、書類から顔を上げて皇帝を見る。その目の下はうっすらと黒くなっており、十分な睡眠がとれていないことがわかる。
「だから、布教活動だよ。まさか仕事が終わってから夜中にやってないだろうな」
 皇帝の言葉に、それまで止まることなく動いていた女教皇の手が一瞬止まる。その後は誤魔化すように、より早く動いていたが、戦場で培われた皇帝の目には、その一瞬で十分だ。
「はぁ・・・・・・。この地下世界、昼も夜も対して変わらないとはいえ、夜の方が危険性は増してるんだ。夜活動するのはやめろ」
「ですが・・・・・・」
「いいか?どうやら勘違いしているようだから言っておくが、俺は宗教に頼らなくていいなら、頼らないに越したことはないと思ってる。宗教ってのは、心に傷を負ったものが社会に復帰するための手段の一つだと考えてるからだ。むやみやたらと広めていくと、その過程で宗教の形が歪み、別の教えとなることもあるからな」
 皇帝の言葉に、女教皇が完全に手を止めた。
「だから、お前もうここに住め」
「・・・・・・え?」
 女教皇が驚きとともに皇帝の方を見る。
「俺は今まで穏健派擁護の立場を取らないためにお前と関わらないようにしてきた。でもよ、今この状態は外から見ると穏健派を保護するものとして写っているはずだ。だったら影でコソコソと動かれるよりは目の前にいてもらったほうが気が楽だ」
「一つ聞いても?」
「ああ、答えられることなら」
「どうして今更?私がこの国に滞在することを認めた時点で、穏健派を擁護する立場にあることは理解していたはずです」
 女教皇の指摘に、皇帝は返す言葉もない。確かに、敵対組織の要人を匿っていれば、そこはその要人の立場につく、と解釈される。それは戦をする皇帝もよくわかっていた。
「一つの理由として、認めたくなかった、っていうのがある」
「認めたくない?何をです?」
「宗教をだ。お前たちレギオン教だけじゃないが、宗教なんて所詮は弱者の戯言だと思っていた。だが、この短期間でお前は確かに信徒を増やした。それはそれだけ宗教を必要としていた人がいたってことだ。だから、この国にも宗教が必要だと思った。そういうことだ」
「では、布教するのはここを拠点にして、ということですか」
「まぁ・・・・・・。布教するんならな。だが、そんなに信徒を増やしてどうする。国家転覆を狙ってるのか?」
 冗談混じりの皇帝の問いかけに、女教皇は慌てた様子で首を左右に振った。
「そんなこと考えてもみませんでした!!私はただ、皆さんが死んだ後のことを気にすることなく生きていくための手伝いをしたいだけです。布教活動は・・・・・・。続けなくても構いませんね。習慣でやっていただけなので」
「じゃあ、布教活動っていう名前を変えろ。カウンセリングだな。お前は今日から国が抱えるカウンセラーってことにする。その手段として宗教を使えばいい」
「カウンセラー・・・・・・ですか」
「ま、簡単に言ってしまえば個人の相談役だ」 
「・・・・・・考えさせてください」
 女教皇の言葉に皇帝は頷くことで返事とすると、再び事務作業に戻った。

 その後、皇帝の住む地下王宮では、負傷した兵士や、身内を失った者の相談を受ける部署が設置された。相談をしたものはその後、レギオン教の信徒となるものが半分ほどで、皇帝の治める国では、レギオン教の信徒は徐々にではあるが、増えていった。
 後に、レギオン教穏健派発祥の地として、信徒が巡礼にやってくることとなるが、それはまだ誰も知らない。

Yves TOPTAROT TOP
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